秋田県は少子高齢化が著しく、過疎化が進んでいる。働く場はあまりなく、若者は住みつかない。秋田に明るい展望はないという。ならばどうする。朝日新聞秋田県版に掲載された“むのたけじ”さん(横手市在住のジャーナリストの92才)のインタビュー記事を取り上げてみる。



─秋田県民は純朴だと思っていたけれど、数年前の米の横流し(注1)などで悪印象をもちました。

根っこの秋田県人はずるいことはできない馬鹿正直だ。米がたくさんとれて豊かだから、ゆとりがあってお人よしなんです。だからうんとだまされた。そうれでずるい人も出てきたと思う。本当の秋田はいい要素がたくさんある。それを今の秋田県人は忘れている。


─どんなことを?

まず自然条件。海の幸、山の幸、何でもある。三つも大きな川があるなんて恵まれている。社会生活するのにも、みな県内のもので間に合う。もっと自分たちの足元を見ないと。 それと本当は積極的、進歩的、新しいことに関心があるのが本来の秋田県人なの。昔、六郷(現美郷町)の辻という大地主の家に、赤穂浪士の討ち入りで有名な浅野内匠頭の城が払い下げた紋の入った調度品があったの。 米を船に乗せて京や大阪に売りに行って、帰りに瀬戸内海に入って赤穂に寄った。家具調度品が売りに出されていたが、殿様が切腹した縁起の悪いものを誰も買わない。それを買ってくるという好奇心がある。 秋田はだから、プロレタリアートのプの字もない大正時代に、「種蒔く人」(注2)が出たでしょ。小林多喜二もそう。東海林太郎は直立不動で歌って歌謡曲を大衆のものにしたし、石井獏(注3)の西洋舞踊もそう。こういうのを生むのが秋田なのよ。


─そんな印象の県民は少ないような気がします。


他力依存になったから。東京の面みて人頼みする。自分で開拓するということを忘れた。秋田県人ではなくなったのよ。


─むのさんの大テーマは戦争をなくすこと。秋田県のことにも関心があるのですね?

そりゃ、ありますよ。生きて暮らしてきたところだから。ふるさとがよくなってもらいたいと思うのが自然。 国家も同じで、生まれた国家を悪く思うわけはない。それを「国家を愛せ」とわざわざ政府が号令かけるのは、その国が愛するに値しないから。黙っていればいいのよ。愛に理屈はいらない。男と女だってそうじゃないの。言葉でぐちゃぐちゃしゃべるのは、中身が貧弱だから。



─秋田の自殺率は日本一高いです。


これも解釈の仕方。いろいろ社会問題があって、克服できない弱虫だから自殺するというけれど、そうじゃない。秋田県民はうまくはぐらかしたり逃げたり、ごまかせない。いい加減なことができないから真っ直ぐに受け止めて、問題が解けなくて我が身を滅ぼす。だから自殺が多いことは恥じゃない。人間に対してまじめな証拠。なくさなきゃいけないけど、事実はそういうことだ。 要するに今、秋田県は皆、どこにどう行こうか迷っちゃってるのよ。だから秋田が秋田に戻れということを言いたい。滝田の本当のところに戻れば活路が開ける。秋田県がよみがえるような、生き返る道を、いまから話したい。




(注1)米横流し・架空取引 全農あきたは04年、卸販売会社に米を引き取ることを前提に落札を依頼、米の価格を吊り上げた。2億5千万円余の不良債権の穴埋めに、農家から預かった米を勝手に売りさばいたとして、4人が05年、業務上横領罪 などで起訴され、06年有罪が確定した。
(注2)種蒔く人 秋田市の土崎小出身の小牧近江、金子洋文、今野賢三らが1921(大正10)年に発刊した雑誌。反戦、平和、虐げられた人々の解放などを目指した。小牧は「たて
飢えたる者〜」で知られる労働歌「インターナショナル」の初期版の訳詩者
(注3)石井獏 1886(明治19)年山本町(現、三種町)生まれ。日本の創作舞踊の先覚者。海外でも高い評価を受け「舞踊詩人」と呼ばれた。



むのたけじ 1915年(大正4)六郷町(現美郷町)生まれ。36年に東京外語大を卒業し報知新聞に入社。40年に朝日新聞記者となり、中国特派員、東南アジア特派員などを歴任。終戦の45年8月に「負け戦を勝ち戦とだまして報道してきた責任をとる」と退社。48年2月から横手市で週刊新聞「たいまつ」を創刊。78年の780号まで続けた。著書に「詩集たいまつ」(評論社)1〜5、「戦争いらない、やらない世の中へ」(評論社)など。

  



1.本来は積極的で進歩的。まじめだから自殺が多い 2.心に入り込んだ死神「ぬくもり」が追い払う 3.三世代同居に戻ればいい。自然と孫へ知恵伝わる 4.「伝統行事」で金儲け。地域生活を汚しちゃう 5.大自然の恵みこそ幸せ。若い人必ず農業に戻る
6.平和運動 標語にあらず。己の生活態度を変えよ 7.「高齢」は官僚のだまし。みんなでみんな守る 8.国境なんて元々ない。小さな単位で助け合う 9.資本主義のゆがみを直せ 10.大騒ぎの必要はあったか
11.突き詰めて考えよう